当院が用いている矯正技術はNC(ニューカイロプラクティック)理論を基盤としており、それは身体が生まれ持つ自然治癒力(Innate Intelligence)が正常に発揮されることを目的としています。
この自然治癒力の最大化を妨げている状態(歪み)、特に脊椎と神経系の機能障害を矯正することがニューカイロプラクティックの主な目的です。
ニューカイロプラクティックにおける歪みという概念は決して単純ではなく、正しく包括的に理解するためには3つの歪みに関する重要な項目を理解しておく必要があります。
それが、「サブラクセーション(Subluxation)」、「フィクセーション(Fixation)」、そして「カンパセーション(Compensation)」です。
ここではカンパセーション(Compensation)について解説していきます。

カンパセーション(Compensation):二次的代償運動
カンパセーション(代償動作や代償運動とも呼ばれる)とは身体が一次的な機能不全(例えば、脊椎のフィクセーション、関節の痛み、あるいは構造的非対称性)を補うために他の関節分節や姿勢制御系を介して二次的な運動や姿勢の変化を生じさせることです。
これは重心の安定化、疼痛の回避、または特定の運動機能の維持を図るために無意識下で起こる現象です。
カンパセーション(Compensation)つまり代償を引き起こす機序はその発生源と性質によって大きく二つに分類されます。
1、構造的カンパセーション(Structural Compensation): これは身体の固定的な構造の非対称性に対応するために発生することによつ永続的な姿勢やアライメントの変化を指す。脚長差(骨長の不均衡)、脊柱の側弯、または重度の骨関節炎による関節変形などが原因となり脊柱や骨盤がその構造に合わせて歪んだ状態となる。
2、機能的カンパセーション(Functional Compensation): これは運動制御系の異常(VSC)や急性または慢性の疼痛回避行動によって一時的、あるいは習慣的に発生する運動パターンの変調。例えば腰椎のフィクセーションによる動きの不足を補うために胸椎や股関節が過剰に回旋する動きなどが該当する。これは一次性の機能不全が解消されれば理論的には回復可能とされています。
【代償パターンの連鎖:上行性および下行性の影響】
カンパセーションは全身を網羅する運動連鎖(Kinetic Chain)を通じて伝播することが特徴です。(=代償)
1、上行性連鎖(Ascending Chain): 下肢から体幹へと波及する代償パターン。例えば足関節や足部の特定の制限(フィクセーション)が存在すると、その影響は膝、股関節、骨盤、そして腰椎へと順次影響を及ぼし、離れた部位で代償的なサブラクセーションや運動異常を引き起こす。
2、下行性連鎖(Descending Chain): 頭部や頸部から体幹へと波及する代償パターン。例えば視覚器の機能異常、噛み合わせの問題、またはTMJ(顎関節)の機能不全は頸椎のアライメントに影響を与え、その姿勢の歪みが胸椎、腰椎へと連鎖的に伝播する。
【 カンパセーション(代償)がもたらすリスク:二次性のサブラクセーションと慢性化】
一般的に出やすい「痛み」の多くは一次性の原因(フィクセーションやVSC)に対するカンパセーションの結果として生じた二次性の症状であることが多い。カンパセーション部位は機能低下部位の動きの不足を補うために構造的にも機能的にも過剰に動く傾向があるため、必然的に機械的ストレスが蓄積しやすく時間の経過とともに、この過剰な負荷が炎症、変性、そして慢性的な疼痛を引き起こす傾向にあります。
例えば下部頸椎に動的なフィクセーションが存在する場合頭部の位置を保つために上部頸椎や肩甲帯周囲の筋肉を過剰に働かせ、結果として患者は下部頸椎の運動制限を自覚するよりも代償部位である肩こりや頭痛といった症状を主訴として自覚しやすい。
この現象はカンパセーションが本来の原因箇所を見逃すリスクがあることを意味しており、症状を根本から改善するためにはカンパセーション部位のみを施術するのではなく、全身の運動連鎖を分析し一次性サブラクセーション/フィクセーションを正確に鑑別する能力が必要不可かつである 。代償部位のみを緩和しても一時的な改善に終わるかあるいは他の部位で新たな代償を引き起こす可能性があります。
【鑑別と評価】
ニューカイロプラクティック理論(NC理論)において重要な基盤は、施術の安全性を確保するための「鑑別」と、本当の原因箇所を特定するための「評価」である 。
フィクセーション、サブラクセーション、カンパセーションは相互に複雑に影響しあっていてそれぞれが施術の目的や効果が違うため明確な鑑別が必要となります。
・フィクセーションの鑑別: 局所的なモーション・パルペーションを用い、特定の運動分節における関節可動域の減少を確認。
・ サブラクセーションの鑑別: フィクセーションの所見に加え、筋力検査、反射検査、他の神経機能評価において神経生理学的異常(ニューロパソロジー)が確認される。これは単なる構造的な問題を超えた神経系の機能障害の存在を示している。
・カンパセーションの鑑別: 複数の分節にわたるパターン化された可動域の変化として現れる。典型的なのは一つの分節がフィクセーションを示すのに対し、別の分節が代償的に過剰運動(ハイパーモビリティ)を示す連鎖パターン。疼痛の訴えが生体力学的負荷が集中している代償部位に偏っていることが多い。
【調整(アジャストメント)】
NC理論においては矯正部位は症状を引き起こしている原因となっている一次性のサブラクセーションまたはフィクセーションに行います。カンパセーション部位はその原因が取り除かれれば自然に安定化に向かう傾向があるため、一次性の病変を放置して代償部位のみを調整することは理論的にも合理的ではありません。
調整(アジャストメント)は単に関節を物理的に動かす行為以上の深い神経生理学的意義を持っていてアジャストメントが用いられる高速度低振幅(High Velocity, Low Amplitude: HVLA)の刺激は関節包に存在するメカノレセプター(特に動きの変化を感知するI型およびII型受容器)に対して高い刺激を与えます。
この刺激は脊髄および脳幹レベルに異常な求心性入力(Afferent Input)を一時的にリセットする作用があり、サブラクセーションが持続的な異常入力(求心性干渉)を生じさせていたのに対し、調整はこのパターンを瞬断することで神経系の運動ニューロンの伝導を変化させる作用があり、結果として周囲の筋緊張の即時的な緩和や運動制御システムの再調整が起こると考えられています。
これによりカンパセーションの原因となっていた機能不全が取り除かれ身体は自己調整能力を介して自発的に正常なアライメントと運動パターンを取り戻すことが可能となります。
サブラクセーションの解消は局所的な疼痛の改善だけでなく、神経機能の回復を通じて身体が本来持つ「自然治癒力」を回復させる助けとなりますが、再発予防の観点から見るとフィクセーションやサブラクセーションが解消された後も長期にわたってカンパセーションを発生させていた姿勢や動作の習慣(ライフスタイルの因子)が残る可能性がり、機能回復のためのアジャストメントに加えてこれらのカンパセーションを修正するための運動療法や姿勢指導が長期的な安定と再発予防には不可欠となっています。
簡単に整理をするとフィクセーションは局所的な運動機能不全(Hypomobility)を指しこれが神経生理学的異常を伴うときに広義のサブラクセーション複合体(VSC)として発生します。そしてこれらの一次性の機能不全を補うために全身の運動連鎖を通じて発生するのがカンパセーションとなります。
よってフィクセーション、サブラクセーション、カンパセーションという三つの相互に深く関連した動的な概念を理解することは効果的な予防や高い効果を生み出す施術を行う上での基礎となっています。
以上が、当院で用いているカイロプラクティックの理論であるNC(ニューカイロプラクティック)理論における歪みの重要な要素であるカンパセーション(Compensation)という概念でした。簡単にまとめると歪みの帳尻合わせにより本来の役割以上に働いている部位がカンパセーション(Compensation)となります
今後も勉学に励み施術効果の最大化を図っていきますのでよろしくお願いいたします。
国立駅前カイロプラクティック整体院







